大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和28年(う)260号 判決

所論に鑑み、原審並びに当審受命裁判官の検証調書の記載、原審証人村社ハナ及び同藤井榮の証人尋問調書並びに当審証人村社ハナ及び同藤井榮の受命裁判官に対する証人尋問調書中、同人等の供述記載を綜合すれば、被告人は原判示日時頃、原判示場所附近において休息していたところ、たまたま、その前を、かねて知合の藤井榮が通りかかつたので、これを呼びとめ、原判示村社ハナが出していた露天店の北側近くで暫く話し合つていたところ、藤井榮は、まもなく被告人と別れて帰途についたが、その際、同人は飲食して幾分酔つていたので、持つていた現金等在中の原判示布製手提鞄をその場に置き忘れ、その場から約三〇〇米歩いた頃それに気付き、直ぐ、通りかかりの三輪車に乗つて現場に引返したが、その時には、既に、その手提鞄が置き忘れてあることを村社ハナから聞いた被告人において、これをその場から持ち去つた後であり、しかして、その手提鞄は、村社ハナが商いするため、敷いていた莚の北側近くに立つていた被告人の前に在つたことが認められるのである。

かように、犯人以外の者の支配力の及ぶ場所内に一時置き忘れられた財物が存在し、しかも、その置いた場所が判然している場合には、その財物を目して、直ちに、他人の占有を離脱した、いわゆる遺失物とは言い得ないものと解するのが相当である。さすれば、その財物を、直ちに、その現場において領得した場合には、窃盜罪が成立するものといわざるをえない。しかして、前掲各証拠を綜合すれば、本件物件が、原判決認定のように村社ハナの管理にあつたものとは認め得ないが、しかし被告人が叙上説示の状況のもとにあつた本件物件を、不法に領得したいきさつは優にこれを認め得るので、前説示するところにより、本件窃盜罪の成立すること多言を要しないところである。さすれば原判決が、本件物件は、村社ハナの管理していたものであると判示した点は、結局、事実を誤認したものと言い得るが、しかし、その誤認は、判決に影響を及ぼすものとは認められないからこれをもつて、原判決を破棄すべき事由となすことを得ない。それ故、本論旨は採用し難い。

(後略)

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